【解説】依頼をするなら手順書作成が必須|どれぐらい作り込む?

解説

オンサイトワークをアウトソーシングするにあたって、やるべきことのうちの1つに「作業手順書の作成」があります。
社内向けにせよ、自分以外の作業者のために手順書を作成された方はおわかりかと思いますが、なかなかに大変な作業です。
「手順書作成するぐらいなら、自分で現地作業したほうが早い」となってしまいがちで、作業をアウトソーシングするかどうか躊躇する理由の大きな一つです。
作業手順書の作成について考えてみましょう。

手順書は料理におけるレシピ

手順書は例えれば、料理におけるレシピのようなものです。
概要があり、材料や工程が示されていれば、人は食べたことの無い料理を作ることも可能です。
同様に、手順書で概要や必要部材、工程が示されていれば、作業者は経験の無い作業も完遂することが可能です。
有名料理人の肉じゃがのレシピと、実母の肉じゃがのレシピは材料や工程に違いはあるかもしれませんが、それぞれレシピ制作者が正解と思うものが記載されています。
手順書においては正常系を示すことにより、作業者はこの作業の正常な形、あるべき姿を把握することができます。

作業手順書と料理レシピの決定的な違いは、「記載されていないことはやってはいけない」ことです。
肉じゃがのレシピに記載していない調味料を好みで追加しても、味が変わるだけで肉じゃが自体は完成すると思いますが、作業手順書においては作業者の独断で手順を追加することは厳禁です。
追加することだけではなく、省略することも同様で、作業者は手順書に記載されている内容をそのまま実行します。

もし手順書を用意せず作業を依頼した場合、例えば一口に「機器の入れ替え」という言っても、作業の順番ややり方が作業員次第ということになってしまいます。
作業員のスキルや経験によって内容が変わるようでは、作業の品質を平準化することができません。
また「既設機器の設定情報を予め控える必要がある」、「既設機器内のデータをバックアップした上で新設機器に移行する」といったことは「機器の入れ替え」の一言だけでは想起できません。
最低限、正常系を示す作業手順書を用意し、それに添って作業を依頼する必要があるのです。

手順書をどれぐらい作り込むか

通常、顧客から提供される手順書の作りは画像入りで念入りに作られたものから、テキストのみで簡素に作られたものまで、様々です。
ドメイン参加を例に比較してみます。

丁寧な記載

・ドメイン参加

続いて、ドメイン参加を実施してください。

1.「コントロール パネル」から「システムとセキュリティ」、続いて「システム」と進み、画面右側の「このPCの名前を変更(詳細設定)」を押下してください。
開いた「システムのプロパティ」ポップアップの
下部、「変更」ボタンを押下してください。

2.開いた「コンピューター名/ドメイン名の変更」ポップアップ下部の「ドメイン」のラジオボタンをオンにし、「XXXXX」と入力してください。
その後、「OK」ボタンを押下してください。

3.開いた「コンピュータ名/ドメイン名の変更」ポップアップで、ユーザー名:YYYYYと入力、パスワード:ZZZZZと入力してください。その後、「OK」ボタンを押下してください。

4.開いた「ドメインへようこそ。」ポップアップで「OK」ボタンを押下してください。

5.開いた再起動についての説明ポップアップで「OK」ボタンを押下してください。

6.開いた「システムのプロパティ」ポップアップで「閉じる」ボタンを押下してください。

7.開いた再起動についての説明ポップアップで「今すぐ再起動する」ボタンを押下してください。

簡素な記載

・ドメイン参加

続いて、ドメイン参加を実施してください。

ドメイン名:XXXXX
ユーザー名:YYYYY
パスワード:ZZZZZ

その後PCの再起動を実施してください。

要点が押さえてあれば「簡素な記載」であっても良い

「丁寧な記載」の手順書であれば、日常的にWindowsPCを利用している一般の方でも、「ドメイン参加」ついての知識が無くても、作業を実施することができるでしょう。
一方、「簡素な記載」の手順書は作業者が「ドメイン参加」を知っている・対応できることを前提に作成されており、エンドユーザー毎に異なる管理ユーザー名やそのパスワードのみを開示しています。

いずれも手順書であることには違いは無く、「ドメイン参加」について知識や実施経験のある作業者であれば、どちらの手順書でも同じ作業結果となります。

手順書を作成する中で、上記のような「丁寧な記載」の手順書を想起してしまい、億劫に感じているかも知れませんが、要点さえ押さえているのであれば部分部分は「簡素な記載」であっても良いのです。
ただし、途中で複数パターンに分岐する手順であったり、作業対象端末特有のスイッチや端子など一般的では無い事項については画像などを交え、「丁寧な記載」を心がけましょう。

時に、作業手順書の代わりに、入館から退館までの時系列に並べた、チェックシートに添って作業を行うこともあります。
作業者としては、通常の作業手順書と同様に記載の通りに進めて行き、完了毎にチェックを行います。
チェック項目で最低限、上記の「簡素な記載」程度の手順が示されていれば、手順書の体を成していなくても作業依頼は成立するでしょう。

異常系についてはどうカバーするか?

上記の通り、作業手順書には作業の正常系が記載されています。
では、作業手順書通りに進まない事象、つまり異常系についてはどう備えるべきでしょうか?

エスカレーション連絡先を記載する

手順書内の冒頭あるいは末尾に、「手順書に記載の無い事象が発生した場合は自己判断せず、速やかにエスカレーション先に連絡してください。」といった記載とともにエスカレーション先の電話番号を記載しましょう。
何より重要なのは、異常系が生じた場合に作業者に自己判断で何かしらの行動を実施させないことです。
「何かしらのエラーメッセージが表示される」「機器間の疎通ができない」等、作業現場では時に様々な異常系が生じますが、多くの場合、原因の特定と作業のリトライで解決します。
過去、作業員の自己判断とそれによる行動が原因特定の妨げになった例が少なくありません。
手順として、「異常系が生じた場合は速やかにエスカレーション先へ連絡する」を盛り込みましょう。

はじめから「エスカレーション先と電話を繋ぎながら行う」手順とする

例えば、仙台支社で使用している複合機と、広島支社で使用している複合機のメーカーや機種が異なる場合、「訪問先であるエンドユーザーの拠点ごとに状況が異なる」ということが生じます。
上記の例の他、「基本的に個人のメールアドレスの設定だけで良いが、営業部と総務部の方だけはそれぞれの共通メールアドレスも設定が必要」というような訪問先別に存在する若干の差異は、ワーカーの確認ミス、勘違いミスの原因になりやすいものです。

このようなワーカーのミスが発生しそうと予見できる場合は、手順書の中で当該の作業をはじめから「エスカレーション先と電話を繋ぎながら行う」手順としてしまうことも一手です。
チャットアプリを使用し、ミスの心配のある作業だけは写真の撮影、送付で逐一報告してもらうという方法も効果的でしょう。

まとめ

  • 作業手順書は必須
  • 最低限正常系が記載されていれば、記載自体は簡素でもOK
  • 異常系はエスカレーションでカバーする

オンサイトワークをアウトソーシングするにあたっては、丁寧か簡素か、いずれにせよ正常系が記載された作業手順書が必須になります。
おそらく一番はじめの手順書作成は大変な手間になるとは思いますが、一度雛形を作ってしまえば多少の更新で長く使い回すことができます。
簡素な手順書から始めて、依頼の都度、更新・バージョンアップしていくのも良いでしょう。

作業をつつがなく完了させることは、何よりエンドユーザーのCS向上となります。
手順書は「オンサイトワークの基礎」、まずはしっかりとした基礎づくりから取り組んでいきましょう。

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